今回ご紹介する陶器山七不思議は梵字ヶ芝。別名を梵字ヶ原ともいう。和泉名所図会の陶器庄髙倉寺のくだりに、「梵字芝といふあり。髙倉村より十町ばかり東にして、地上に梵字の形に凹なる土地あり。年を歴れども、埋れず。又、芝生生ぜずといふ」とある。高倉村から約1キロ、前回紹介した槇塚から東に約500メートルの山に存在していたとされる。七不思議の正確な場所は今ではもう分からなくなっているのだが、身近なところから貴重な情報を得た。我がコミュニティ代表・皿谷(表紙の共聴アンテナ担当)が約50年前、現在のプール学院短期大学と桃山学院教育大学(槇塚台4丁5番1号)がある丘に登って「梵字ヶ芝」にお参りした記憶があるそうだ。槇塚が前回ご紹介した通りに槇塚台1丁10番だとすると、位置・距離的にも符合する。

 言い伝えによると、山の中腹に弘法大師が錫杖で「かんまん」という梵字を掘った。梵字の大きさは約10メートル四方、深さ約30センチ位で、不思議なことに、この梵字は千数百年経過した後も形が崩れず保たれたままで、草が生えることもなく、清らかな水をたたえていたという。この水を飲めば難病も治ると、登ってお参りする人が後を絶たなかったそうだ。付近の松の木を切った人が腹痛を起こしてその場に倒れたとも伝わっている。

 弘法大師空海の伝説は各地に残っているが、ここと同じく梵字を掘った奈良の梵字池、川の流れに梵字が書かれた蓮の葉を見つけた山形の梵字川渓谷など、梵字にまつわる話が多い。それもそのはずで、梵字とは古代インドのサンスクリット語を起源とする「仏様を真言で表現した文字」のこと。ちなみに、梵字ヶ芝に刻まれた「かんまん」という梵字は、「かん」=不動心、「まん」=柔軟心、2つ重ねると不動明王を表す。不動明王は大日如来の使者で、悪いものをはらって福を招く御利益がある。梵字ヶ芝の言い伝えはその御利益で病気からの回復を願ったものだろう。梵字ヶ芝が陶器山七不思議の一とされているそうだが、むべなるかな、である。

(2019<平成31>年1月31日の記事を再掲載しました)